炎上寄りのバズで7万円の収益を得たことを書いたブログ記事が話題になりました。
ブログで収益を得ること自体はビジネスして正しいですし、7万円という収益はちょっとうらやましくもあります。
しかし、この記事を読んで思いました。
AIさんのこれからが心配で仕方ない
三方よしとは
どのようなビジネスであれ、忘れてはならないのが三方よしの精神です。
三方よしは江戸〜明治に活躍した近江商人の商売の心得です。
400年たった今でも、さまざまな会社が社訓に三方よしを挙げています。
(マーケティングやクリエイティブ系の企業に多いように思います)
三方よしの「三方」とは、売り手、買い手、世間を指します。
たとえば、ぼくがトヨタのプリウスを買う場合、
- 売り手:トヨタ
- 買い手:ぼく
- 世間:街、都市、地球環境
といったあんばいです。
さて、三方よし、つまり三方とも嬉しいというのはどういうことか。
プリウスの例で言うと
- 売り手:トヨタ(売上・利益を得る)
- 買い手:ぼく(より早く、遠く、燃費よく移動できる)
- 世間:街、都市、地球環境(排ガス汚染が減る)
ということになりますね。
トヨタはプリウスを売ることでぼくや世界に貢献し、その見返りとして対価を受け取っているのです。
そして三方よしのアイデアで一番大事なのは、三方よしを続けることで売り手は信頼を得られるということ。
信頼されていない売り手からは誰も買いたくないですもんね。売り手の名前を見ただけで「あいつか、よしとこ」と思われたら商売あがったりです。
収益を追うブログにおける三方とは
ではこの三方よし、収益を目的としたブログではどうなるでしょうか。
まず前提として、ブロガーが収益を得るということは、ブロガーと広告主がタッグを組んで、ブログ読者に広告を見せ、商品を売ることです。
さて、ブログには当然書き手であるブロガーと読み手である読者がいます。もちろん広告主の存在も忘れてはいけません。
扱うのが広告なので、コンバージョンの概念も必要です。
すると、読者はさらに、単なる記事読者(アクセス者)と広告クリックや商品購入をする人(広告クリック・商品購入者)へ分けて考える必要があります。
一方、その商品の売り買いに関係ない関係者もたくさんいますね。他のブロガーやブログサービス提供者、他広告主など、さまざまです。
以上まとめると、収益ブログの関係者を売り手、買い手、世間のフレームに当てはめるとこうなります。
- 売り手:ブロガー+広告主
- 買い手:読者(アクセス者、広告クリック・商品購入者)
- 世間:他ブロガー+ブログサービス+他広告主など
三方よしなブログとは
では、三方よしなブログとはどのようなものでしょうか。
先ほどのフレームで当てはめると
- 売り手:
- ブロガー:PVがあがり、収益を得られる
- 広告主:広告が見られ、商品が売れる
- 買い手:
- アクセス者:記事を読んで楽しめる、良質な情報を得られる
- 広告クリック・商品購入者:興味ある商品の情報を得られ、購入できる
- 世間:
- 他ブロガー:切磋琢磨、ブロガーのイメージ向上
- ブログサービス:自サービスのイメージアップ
- 他広告主:ブログというメディアの利活用の幅が広がる
こんな感じでしょうか。
ブロガーが良質な記事を多く生みだすことで、ブログというメディアを取り巻く良い循環が生まれていく
そういう世界が見えてきます。
炎上でPV/収益を狙うブログは「一方よし」
次に、ブロガーが自ブログのPVと収益のみをKPIに追いかけ、読者の感情を逆なでしてでも炎上という名のバズを求め続けた場合を考えてみます。
簡単にいうと、一方(ブロガー)よし。
短期的にはPVや収益が得られるかもしれませんが、他の二方からの信頼を失うことになりかねません。
まさに「あいつか、よしとこ」状態です。
ものすごく極端な例でいうと
- 売り手:
- ブロガー:PVが上がり、収益を得られる(一方で信頼を失う)
- 広告主:広告が見られ、商品が売れる(その一瞬だけ)
- 買い手:
- アクセス者:記事を読んで嫌な気分になる
- 広告クリック・商品購入者:興味ある商品の情報を得られ、購入できる
- 世間:
- 他ブロガー:ブロガーのイメージ低下、広告収益減少
- ブログサービス:自サービスのイメージ低下
- 他広告主:ブログを敬遠、ブログへ投下する広告費の減少
なんてことになりかねません。
もちろん、これは最悪のパターンを想定したテラーストーリーです。
AdSenseなどの広告ネットワークを使っている場合は広告主への影響は軽微だと思いますし、これらが全て現実になるとも限りません。
しかし、
- 炎上マーケを狙ったブロガーが信頼を失う
- ブログやブロガーのイメージが悪化する
の2点は確実に起こります。
「なんだ、個人ブログかよ」の一言でブロガーが切り捨てられていくのです。
ゆくゆくは、これまで成長して盛り上がってきたブログというエコシステム自体の信頼が揺らぎかねません。
三方よしから遠い場所にいるブロガー本人が心配
という大上段なお話は頭のかたすみに置いておきつつ・・・。
ぼくが一番心配なのは、AIさんという若者のこれからです。
ぼくは彼女のことをこの記事でしか見ていませんが、三方よしを差しおいて、理念や信条なくPVや収益を追いかけることを良しとする環境に身を置いているように見えてしまっています。
もし、ひょっとして、万が一、仮に、まさかないとは思いますが、
- PVと収益を唯一無二のKPIとせよ
- そのためのテクニックは手段の是非を問わず実行せよ
と誰かから教わっているならば、悪いことはいわないので、そのマインドが定着してしまう前にその場を離れることを強くおすすめします。
ビジネスは信頼が全てです。
そして炎上はブログアクセスアップの手段としては有効である一方、間違えて使うと一気に信頼を失いかねない、きわめて高度で危険なマーケティング手法です。
上手に燃やし、燃えすぎないようコントロールし、早いうちに鎮火し、燃えすぎた際はマイナスをむしろプラスに転じさせる。
そのような上手な立ち回りができないのであれば、安易に炎上マーケティングに手を出してはいけません。
信頼を失ったあげく、ケシズミになるまで燃やされ続けてしまいます。
結果、何が残るか?
ケシズミになったAIさん、そして名前をググれば炎上・バッシングされた過去があらわになってしまうという事実です。
実名&顔出しでの炎上マーケティングは、自分の未来をも賭けのテーブルに差し出していることを自覚してください。
だから心配なんですよ。22歳なんですよね。ぼくよりも10歳以上年下の、未来ある若者です。
たった7万円ぽっちを得るために未来を潰してほしくありません。
はてなブックマークコメントでこう書いたのもそんな思いからです。
結果が出てるのはすごいですけど、マイナスの感情を逆撫でするというやり方は下品ですし、信頼や品位を落としかねません。大丈夫?
まとめ:三方よしのブログで信頼を勝ちとろう
以上、炎上マーケに片足突っ込んだ若者を心配するアラサーのぼやきでした。
炎上によるアクセスアップに惹かれているブロガーの誰かひとりにでもこの記事が届き、思いとどまってくれることを切に願います。
例の炎上系新入社員女子ブロガーの件、三方よしの概念が全く抜けているよね。PVと収益という、定量敵でわかりやすいKPIだけを見て動いてる。
拙速なKPI至上主義に走って崩れていく落ち目企業を見ているようで痛々しい。
まだ若いので、早く良き師匠を見つけて方向修正してもらいたい。
— NAE@ガジェットレビュー『2ミニッツ』 (@naenotenet) August 29, 2016
コメント